美しい冬の星空
冬の夜空に煌めく色とりどりの星たちの共演は、古くから多くの人々を魅了してきました。四季を通じて最も多くの一等星が華やかに輝いています。清少納言が枕草子で「星はすばる(すばるが最も美しい)」とたたえた星団(星の集まり)も、青白く彩りを添えています。明るい天体が多く見られるのは、冬の夜空が美しいと言われる最も大きな要因のひとつです。
冬空の絶対的エース、オリオン座
全天にある88星座の中で特に有名なオリオン座も、冬を代表する星座のひとつです。三つ星を囲む特徴的な形は、古代の人々も様々な意味を与えて眺め、数多くの神話が誕生しました。星座のわからない人でも、オリオン座だけは見つけられる、という方は多いのではないでしょうか。冬の星座の中で唯一、一等星を2つ持ちます。ひときわ目立つ橙色の星がベテルギウス、三ツ星を挟んで対角に青白く輝くのがリゲルです。では、太陽よりも巨大なこれらの星々は、どこでどのように生まれ、今後どんな運命をたどるのでしょう。
星の誕生
星は、数千万年~数十億年程度で輪廻転生を繰り返します。
宇宙には、冷たいガスや塵が雲のように集まった領域があり、その中で少し濃いところは重力で周りのガスや塵を集めます。するとさらにドンドンとガスや塵が集まるようになり、大きく成長していきます。集まった部分は高温・高密度になり、一万度を超える頃に核融合を起こし始めます。これが星の誕生です。
オリオン座の中には、今まさに星を生み出している領域があります。オリオン大星雲とも呼ばれるこの領域は、三ツ星より少し南側(リゲル側)に見られます。望遠鏡をのぞくと、中心付近にはトラぺジウムと呼ばれる生まれたての星々の輝きが見られる、星のゆりかごです。
成長と終焉
こうして生まれた星々は、主系列星と呼ばれる、いわば大人の状態になります。質量によって、色や明るさ、大きさに加え、寿命までも大幅に異なります。例えば青白いリゲルは太陽の数十倍の質量を持つ、高温の主系列星です。寿命は太陽から比べるとあっと言う間で、100分の1程度とも言われています。
主系列星の中心付近で核融合が進み、燃料の水素がなくなると、星の外層部が加熱されて膨張します。すると温度が下がり、赤く輝く巨大な星、赤色巨星となります。ベテルギウスはこの状態です。通常、望遠鏡で見ても星の像は点にしか見えないのですが、ベテルギウスはあまりに巨大なので、電波干渉計という種類の望遠鏡を使って、太陽以外の星で初めて表面の様子が撮影されました。恒星の表面が見えるなんて、天文学者にとっては驚きです!さらに時間が経つと、星は急激に膨張したり、爆発したりしてその一生を終えるのです。遠くにある星の一生が終わったことを、地球にいる我々が知るのは、それからさらに何百年もあとのことでしょう。
専門家の解説を楽しむアストロトーク
ふだん見慣れたオリオン座も、星の一生を一度に見られる星座だと思うと少し見方が変わり、ひとつひとつの星や星雲を望遠鏡でのぞいてみたくなりませんか。
もっと知りたくなった方には耳寄りな情報です。柏の葉キャンパス駅前では、3月まで毎月1回土曜日に、専門家による見どころ解説(アストロトーク)を聞いたのち、一緒に望遠鏡で星を見る天体観望会が開催されています。東大のある街らしい企画ですよね。毎回テーマにちなんだお酒なども楽しめます。星空の魅力をさらに満喫してみてはいかがでしょう。
主催:柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)
http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/