柏の葉からも熱視線!強い重力波を生み出す「連星系」
つくばエクスプレスのちょうど中ほどに位置する柏の葉には、多くの研究施設が集まっています。ノーベル賞を受賞された梶田隆章さんが所長を務める東京大学宇宙線研究所もそのひとつ。駅からほど近く、私も5年半研究していた東京大学柏キャンパスの一角に位置しています。
宇宙を調べる研究者たちがいま熱い視線を送る興味の対象が、重力波の検出です。
重力波はアインシュタインの一般相対性理論をもとに予言された現象のひとつ。巨大な質量を持つ天体の移動により空間が歪み、その歪みが波として伝わるものです。未だ誰も検出できておらず、日本も岐阜の神岡鉱山跡地にKAGRAという巨大な重力波望遠鏡を作って世界的な検出競争に名乗りをあげています。
重力波の起源は様々ですが、例えば2つの中性子星がお互いの周りをまわる時にも強い重力波が発せられます。非常に小さくて重たい中性子星が、地球と月のように重力で引き合いながらお互いの周りをまわります。このようにお互いに周りをまわりあう星たちを、連星と呼びます。
冬の夜空を彩る連星たち
中性子星はもともと”星の一生(https://www.oideyo-tx.com/article/1130 )”の最期の一形態。元々は恒星でした。冬の夜空にはまだ明るく輝く恒星の連星が数多く輝いています。挙げてみると、ふたご座のカストル、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンなど、よく知られた名前がズラリ。巨大な望遠鏡で見ても2つに分離できないものもありますが、カストルは小型の望遠鏡でも2つの星それぞれを分離して見ることができます。
連星のほとんどは肉眼で見てもひとつにしか見えませんが、カストルのように望遠鏡で観察すると分離して見えるものもあります。2つに分かれて見えれば二重星、3つならば三重星と呼ばれます。宮沢賢治も著作「銀河鉄道の夜」でその美しさをたたえたはくちょう座のアルビレオなどが代表的な二重星のひとつです。望遠鏡で見てみると、新たな星を見つけたような、幸せな気持ちになれますよ。
また、連星ではない、太陽のような単独の恒星でも、その周りには地球のような惑星がまわっていることがあります。20年ほど前にその存在が確かめられて以来、たくさんの惑星が見つかり、2015年にはその一部に名前もつけられました。いつか、皆さんの名前が星につく日が来るかもしれないと思うと、望遠鏡をのぞくのも真剣味が増しますね。
重星の中には時折、連星ではないにも関わらず、無関係の星が偶然近くに隣り合って見える「見かけの重星」もあります。奥ゆき方向には距離があるものの偶然近くに見える、ちょうどダイヤモンド富士や日食のようなものですね。重星の中には、いまだに連星なのか「みかけの重星」なのかわかっていないものもあり、興味をかき立てられます。
星空の魅力を楽しもう!アストロトーク&天体観望会
重力に支配され、お互いの周りをまわる連星。いつかどれかが最期を迎えて超新星爆発を起こしたり、中性子星になったりして、そこで発生した重力波が地球で見られる日が来るのかもしれませんね。そんなことを考えながら、帰り路、夜空を眺めてみてはいかがでしょう。
柏の葉キャンパス駅前では、東京大学の大学院生を中心とした科学コミュニケーション団体「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)」(http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/ )により定期的に天体観望会が開催されています。直径13 cmの望遠鏡を使って、今回取り上げたカストルなどをどなたでも無料で観察することができます。
さらに詳しい話を聞きたい方には、天体観望会の直前に開催される「大人のためのアストロトーク」がオススメです。アットホームな雰囲気の中で、専門家とともに夜空に思いをはせる時間を楽しめます。2月13日(土)には、お話にちなんだ「三連星」という日本酒も味わえます。肉眼では見えない深淵な宇宙の魅力に触れ、星々の輝きをさらに満喫してみてはいかがでしょう。
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