しかしながら現代では両親の共働きや帰宅時間が遅いこと、それぞれ自室で過ごす時間が多くなるなど、親子の会話時間は少なくなっています。内閣府の「子ども・若者白書」によると、1週間当たりの親子の会話時間は父親とは~4時間、母親とは「10~19時間」が最も多い結果に。これは1日に換算すると母親とは1.4時間~2.7時間、父親とはわずか34分程度です。みなさんのご家庭ではいかがでしょうか。
(図表出典元)厚生労働省「全国家庭児童調査」
(引用元)http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/b1_06_01.html 平成25年版 子ども・若者白書(全体版)
哲学をテーマに、親子の対話を始めてみよう
会話をする時間は、学習面以外にも、相手の気持ちをくみ取ったり、相手を待つ姿勢、意見を持つ主体性、深く考える思考力を身につけることができます。「でも、改まって一体何について長時間話せばいいの?」と戸惑うパパママもいるかもしれませんが、小さなお子さんとゆっくり真剣に“対話”することって、意外と簡単なんです。ずばりテーマは「哲学」。
例えば一冊の絵本を読み、その物語の中で疑問や不思議に思ったことについて、ひたすらお互いに意見を出し合い、考えを深める時間を設けるのです。
実際にこの“哲学対話”を実践しているのが、特定非営利活動法人こども哲学 おとな哲学 アーダコーダです。
子供の自由な発想に驚かされる、「哲学対話」の力
7/19(日)・20(月・祝)に柏の葉キャンパスで開催された「マナビーヤ!フェスタ」のプログラム、「深く楽しく役に立つ思考の時間。哲学対話をはじめよう」では、約7組の親子が参加。グループによる対話を体験しました。まず初めに、大人も子供も全員一緒に円になって座り、ファシリテーターが1冊の絵本を読みます。(この日読まれたのは「ペツェッティーノ―じぶんをみつけたぶぶんひんのはなし」<レオ・レオニ (著)、谷川 俊太郎 (翻訳)>でした。これは自分自身を「だれかのぶぶんひん」と考えていた主人公ペツェッティーノが、旅をして、最後には「じぶんはじぶん」と気付くまでの物語です)
絵本を読み終わった後、前半は大人と子供のチームに分かれ、絵本を読んで思ったこと、疑問に思ったことを、それぞれ自由に話します。ルールは自分が話したい時は、手を挙げること。それ以外はどんなことを発言してもいいのです。
「作者はどうしてこの本を書いたのだろう?自分自身に投影しているのかも?」「そもそもどうして主人公は自分のことをぶぶんひんだと思ったのか」「ペツェッティーノの気持ちがわかるか」といったテーマで話す大人チーム。
一方、子どもチームは絵本を開きながら、「ペツェッティーノが自分をぶぶんひんだと思ったのは、他と比べて色が少なかったからじゃない?」「自分だったらペツェッティーノを自分のぶぶんひんにはしたくない」「自分はぶぶんひんと言いながら、一人で旅に出て勇気があった」「絵では手足がないのにどうやって船を漕いだの?」などなど、次から次へと発言が飛び出します。他の子の意見に耳を傾けながら、共感したり、さらなる疑問を発見したり。
後半は大人と子供全員が再び一緒になって、それぞれのチームでどんな話をしたか、報告し合います。その後ファシリテーターが「どうしてそう思ったの?」「今他の人が言った意見に対してどう思う?」と問いかけ、みんなで自由に意見を出し合います。この時、子どもたちは他の人の意見を真剣に聞きながら、自分はそれについてどう思うか、さらなる深堀をして考えていきます。新しい発想を生み出すことに、面白さを見つけているよう。
最後に感想を発表しあう時、大人からは「哲学ときいて難しいと思ったが、楽しかった」「大人と子どもで視点が違い、ここか!と驚くことが予想以上にあった」など子供の発想の豊かさ、自由な物の捉え方に気付きがあったと喜ぶ声がありました。子どもからは「色んな人の話が聞けて楽しかった」「思ったより話せてよかった」と純粋に対話を楽しんだ様子がうかがえました。
哲学対話に正解や答え、ゴールはありません。その時間こそが大切なのです。対話をすることで、ゆっくりと相手の話を聞き、自分の意見について考えることができ、また、自分の発言に対して相手がどのように感じるかを知ることができるようになります
たった一冊の絵本を使い、子どもの思考力を引き出す「哲学対話」。親子で今日から始めてみませんか?