アストロトークは、"科学コミュニケーション活動を通じた地域交流の活性化"をテーマに活動する「柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)」が主催するイベントです。
昨年11月の第1回から始まり、全5回、毎回テーマを変えて開催されました。
おいでよTX編集部がお邪魔した第4回(2/13)のテーマは「万有引力」。ちょうど“重力波、初検出”のニュースが世間を賑わせたばかりというタイミングで、関連する話を聞くこともできました。
講師はKSEL会長、国立天文台 広報普及員、そしておいでよTXのナビゲーターとして活躍されている羽村太雅さんです。
“大人のための”というだけあって、アストロトークではアルコールやおつまみなどを味わいながら参加できるのが楽しみの一つ。しかも、毎回テーマに合わせて天体や星にちなんだものが用意されています。初めての人同士でもすぐに打ち解け合える、アットホームな雰囲気です。
研究者の悲願だった、重力波の直接観測に成功!
まず始めに話題となったのは、この日の前日に世界的なニュースとして発表された“重力波”について。
昨年ノーベル賞を受賞した梶田教授も研究に取り組んでいるという重力波は、アインシュタインの一般相対性理論をもとに予測された現象のひとつで、巨大な質量を持つ天体の移動で空間が歪み、その歪みが波として伝わるというもの。
長年、宇宙を研究する人たちの大きな願いだったという重力波の直接観測。これに成功したことで、いままで不可能だったブラックホールの観測も可能になるのだとか。「見えていなかったものが見えるようになった」なんて、専門家でなくてもワクワクしてきます。
重力波について、なんとなくイメージができるようになったところで、今回のテーマ「万有引力」について学んでいきます。
万有引力とは簡単に説明すると、万物に働く引力のこと。実は星の形や星の誕生、惑星の運動や互いの周りを回る連星など、宇宙に見られる多くの天体や現象に、この万有引力が由来しているといわれています。
よく混同されやすい万有引力と重力。厳密にいうと違う概念のものですが、今回はみんなが理解しやすいように同じもの「万有引力=重力」として考えます。
人と人との間でも働く万有引力
日常生活で意識することはほとんどありませんが、実は私たち一人一人の間には万有引力が働いており、お互いに引き合っているのだそう。隣の人とペアを組み、体重や距離を公式にあてはめてお互いの間で働く重力の強さを計算してみます。
体重や距離によって変わりますが、大人が隣に座っているとすると、その間に働く重力はだいたい【2×10-7N】とのこと。地上で100gを支える力が約1Nなので、どれだけ小さいかが分かりますね。
次は、各テーブル一組に分かれたチーム戦。重力によって成り立つ現象について考えます。
水が流れる・月が地球をまわる・潮が満ち引きする・太陽が丸くなる・人間が地上に立てる・雨が降るというものから、スカートがはける・電車が走る・顔のたるみ……など。たくさんの例が挙がりました。
その後の羽村さんの解説によると、なんと燃えている時の炎の形や、入道雲も重力によって起こる現象なのだそう。
ここまでで、いろいろなものに重力が働いているのだなということを実感! でも重力の働きはもちろんそれだけではありません。
以前、羽村さんがおいでよTXで書かれた連星の運動も、重力によって駆動されているものです。
記事はこちら⇒
■柏の葉のノーベル賞学者も注目! 重力が駆動する「連星」の魅力
https://www.oideyo-tx.com/article/1410
重力の働きで星も発見!
肉眼で見ても一つにしか見えない星が、望遠鏡で覗いてみると2つ以上に分かれて見えることがあります。中でも複数の星が重力で引き合いながら、お互いの周りを回る星は「連星」と呼ばれます。
連星にもいくつか種類があります。望遠鏡で長期間観測を続け、お互いの周りをクルクルと回っているのが見えて連星だと認定されるものもあれば、望遠鏡で見てもひとつにしか見えないものの、星が軌道上を動くことで光の波長が長くなったり短くなったりすることで連星だと発覚するものもあります。
この重力による軌道のぐらつきは、太陽系の惑星の中で木星・土星の次に遠い天王星を見つけ出す時にも利用されたそうですよ。
羽村さんの分かりやすくて楽しい星の話にグイグイと引き込まれ、あっという間に終了間際。
質問コーナーでは、「そもそもブラックホールって何?」というような重力波やブラックホール、星についての質問から、天文に関係する仕事に就きたいという学生さんからの、将来に向けてどんな勉強をすれば良いのかというような質問まで、羽村さんが丁寧に答えてくださいました。
帰り際、参加した方に感想をお伺いしてみたところ、
「とても楽しかった」
「こんな世界があったんだということを学べた!」
「重力波についてニュースで聞いても分からなかったけど、イメージができるようになった」
など、これまで知らなかった宇宙の魅力に気づけたと、とても楽しそうな表情が印象的です。
参加者は、アストロトークの常連さんと初めてという方が半々ぐらい。
おいでよTXの羽村さんの記事を読んだという方も半数はいらっしゃいました!
アストロトークでは終了後に毎回、屋外に出て天体観望会が行われます。今回は天候の都合で叶いませんでしたが、興味が高まったときすぐに望遠鏡で星を見られるなんて、素敵な計らいですね。
「今日は星がきれいだな……」
そんなふうに空を見上げる時間があるという方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。忙しい毎日の中でほんの一瞬でも、星を眺めて遠い宇宙について考えるのもいいかも。アストロトークはそんなことを感じた楽しい夜でした。
KSELでは、アストロトークに限らずさまざまな企画が行われています。ぜひチェックしてみてください。
柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)Webページ
http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/
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