「奥田政行シェフの親子旬感クッキングスクール」は、間近で奥田シェフのオリジナルレシピを学びながら、食材の目利きも教わることができるイベント。つくばエクスプレス沿線を中心に、ご家族連れからご夫婦、学生さんなど、幅広い年代の方が参加されていました。
会場となった「オークビレッジ柏の葉」は、柏の葉キャンパス駅から徒歩1分。食材が生まれ育つ工程からお皿の上に載るまでの循環する一連の流れの全てを一つの食のスタイルとして捉える“カッシーナ・キュィジューヌ”をコンセプトとするレストラン、「リストランテ・ディ・オークビレッジ」があります。ここでプロデューサーを務めるのが奥田シェフです。
奥田シェフは、「テッラ・マードレ2006」で世界の料理人1000人に選出され、日本はもちろん世界中から評価を受けるイタリア料理人。他にも地場食材の活用や日本食文化の普及に貢献した料理人に授けられる農林水産省の「料理マスターズ」など、数多くの賞を受賞しています。
“ソースをなるべく使わない”をモットーに、庄内の生命力溢れる食材の持ち味を生かすため、独創性に富んだ調理法を生み出し続ける奥田シェフ。レシピ本には載っていないコツや料理が好きになる豆知識など、たっぷり教えていただきました。
今回のレシピは2つ。
「柏の白カブのサラダ」と「桜えびのクリームソースパスタ」です。
まずは食材についてのお話から。
食べられたいと思っている野菜と食べられたくないと思っている野菜~トマトVSワサビ~
「動物から食べられたいと思っている野菜と、食べられたくないって思っている野菜。どっちだろうなんて考えたことはありますか?」
イベントは奥田シェフのこんな質問から始まりました。
「食べられたいと思っている野菜は、例えばトマトです。赤くなって鳥を誘いだし胃袋にセットしてもらって遠くに運んでもらうため、種の周りがゼリー状になってるんです」と奥田シェフ。
反対にわさびは食べられたくないと思っている野菜。ずっとかじっていると、ワサビは自分の身を守るために苦い酵素を出すのだそう。トマトは動物から食べられたいと思っているので、生のままでもおいしく食べられます。反対に、食べられたくないと思っている野菜には火を通す。人間が火を使うようになり、食べものに飢えなくなったとのこと。
お子さんとも料理や食事をしながらこんな話ができると、食べ物に興味を持ってもらえるかもしれませんね。
「柏の白カブのサラダ」 カブは食べられたくない野菜?
ここから、ひとつめのメニュー「柏の白カブのサラダ」を作ります。
カブは外側が辛く、内側が甘い2層になっています。生で食べるサラダは、外側を厚めにむきます。
息を止めて美しい盛り付けのできあがり!
イベントに参加したお子さんたちも料理に挑戦!
「野菜は、心の中で小川がせせらいでる感じのイメージでちぎると、しゃきっとしますよ」と奥田シェフ。
切ったにんにくをぬりつけたボールで味付けをします。塩を入れる前に、オイルを入れて膜を作ると、水気が出るのを防げますね。
盛り付け方法について奥田シェフから素敵なアドバイス。
「盛り付けの基本は、息を止めること」(奥田シェフ)
息を止めて手の中でおいしくなってねって思いながらパッと盛ると、その形から動かないのだそうですよ!
葉野菜に先ほどのカブを盛り付け、オリーブオイルとレモンをかけて完成です!
誰も教えてくれないおいしいパスタのつくり方
次は、「桜エビのクリームパスタ」。
奥田シェフのお店でも出しているというレシピで、今度はママたちの出番です。
まずは桜エビをカラ炒り。熱が加わると赤みがでて、海老の香りがしてきます。
生クリームを入れて混ぜ、トマトジュースを加えたら海老のクリームソースに。
ソースにゆであがったパスタを入れて混ぜますが、そのままでは全くからんでくれません。
ここからが、奥田シェフのポイント。
「中火で100回位くるくる混ぜます。今何が起きているかというとパスタとパスタがこすれてのり状のものが出てるんです。ソースがなくなって粘度が出るんですね。この仕組みがわかると誰でもおいしいパスタが作れます」(奥田シェフ)
最後に生クリームを加えて微調整。普通は調味料を入れるところを、混ぜるだけでとろみをつける、レシピ本には載っていない、とっておきのコツです。
仕上げにエビと相性のいいセリをのせて、完成です。
料理を楽しむコツ
奥田シェフの料理は、食べてくれる人、生産者、そして食材そのものへの愛情がもとになっているようです。
「例えばパスタを作りながらフライパンをまわしてるとき、だんなさんのために作りたかったらだんなさんの顔を思い浮かべて一緒にまわしましょう。そうするとだんなさんの顔がにこっとするときがあるんです。そこで火をとめて盛り付けるとだんなさんの味になります」と奥田シェフ。
さらに奥田シェフは、在来作物(ざいらいさくもつ)との出会いが、世界中の人に奥田シェフの料理を知ってもらうきっかけになったといいます。
在来作物とは、“ある地域で、世代を超えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物”(「山形在来作物研究会」http://www.city.sakata.lg.jp/industry/agriculture/about/27282pd1005132133.html)です。
どの料理本にもレシピがなかったため、在来作物をとにかくたくさん食べてどうやったらおいしくなるか、答えを導き出してきたとのこと。
まずは食材を好きになる。例えばカブを好きになるともっとカブのことが知りたくなるのだそう。
「でもカブは必ずしも人間にとっていい成分だけではなく、そうでない成分も持っていて、食べすぎると中毒を起こしてしまう。そこまで食べたときに“豚肉がほしいって”って声が聞こえてくるんです。嫌なところも好きになると愛に変わって、新しいお料理がおりてくるんですね」(奥田シェフ)
愛をもって料理を作ったら、その後には「ありがとう」「おいしかった」の共感が必要。
「まずは好きになって、次に愛がある家庭になって、その後胸にぽっかり穴があかないように、だんなさんに愛してるよって言って、だんなさんから今日もきれいだよって言ってもらうことが大事です」と、最後は夫婦円満の秘訣までアドバイスしてくださいました。
ワインの味が分かるようになるまで1週間
続いてイタリア料理を楽しむのに欠かせないワインのお話も。
奥田シェフのおすすめは、休日に赤ワインと白ワインを1本ずつ買って1日1杯ずつ飲むこと。1週間同じワインを飲み続けると、ワインの味が全部インプットできてしまうそうです。家に帰ると毎日ワインが待っていると思うと楽しみも増えますね。
飲みたいワインを飲みながら料理を作れば、ワインに合う料理になるとも教えていただきました。
おいしい魚は水族館で勉強!
おいしい食材の見分けかたも教わりました。
例えば旬のアスパラガス。
先がしまっているものが食べごろとのこと。さらに茎の根元側を見てみましょう。ここが乾いていると、収穫されてから日がたっている証拠。よく見ると小さな穴がたくさんあいているのですが、この数が多いほど栄養をたくさんとろうと細胞分裂をしているので、みずみずしくて香りがいいのだそう。
他には魚のユニークな見分け方も。
水族館でおいしいタイを見極めるという視点で魚を見るというのです。進むのが速くて上の尾びれがちょっと長いもの。おでこがぽこっと出ててエサとりが上手なタイ。その特徴をよく観察して、魚やさんで同じようなタイを見つければいいのだそう!
水族館に行ったら、お子さんとこんなふうに魚を観察してみるのもおもしろそうですね。
柏の葉キャンパスで農と食を体験しよう
会場となった「オークビレッジ柏の葉」は農園を併設しており、安全でとれたての野菜のおいしさを味わえる、食と農のつながりを実感できる場所となっています。他にもガーデンウエディングを中心とした結婚式場や、農園に併設したバーベキュー場、おいしい野菜を使ったサンドイッチなどを中心販売しているベーカリーも。
いろいろな場所で食のプロデュースを手掛けている奥田シェフですが、「オークビレッジ柏の葉」について、「畑もあって、駅周辺にはどんどん新しい施設もできいい環境。パン屋(トレタテベーカリー)ではパンを買うとコーヒーが無料になるサービスもあるので、ぜひ遊びにきて楽しんでほしい」と言われていました。
当日のイベントのレポートは、おいでよTXのナビゲーターさんも記事にしてくださっています。
ナビゲーターさんそれぞれの視点からみたイベントの様子もぜひご覧ください。
『奥田政行シェフの親子旬感クッキングスクール参加レポート』 ナビゲーター:おおたかのもりきちさん
https://www.oideyo-tx.com/article/1873
『料理は愛! 相手の顔を思い浮かべて作る 「奥田シェフのクッキングスクール」』 ナビゲーター:ちーちゃんさん
レシピも紹介されています。
https://www.oideyo-tx.com/article/1875
『野菜への魔法のかけ方を聴いてきちゃいました!』 ナビゲーター:泣石家 霊照さん
https://www.oideyo-tx.com/article/2164