次世代を支える子どもたちの未来力を育む「未来こどもがっこう」の夏休み特別カリキュラム「宇宙アドベンチャーフェスタ」の一コマです。秋葉原からつくばエクスプレスで約30分。柏の葉キャンパス駅周辺施設を会場に、8月22日、23日に開催されたこのイベントには1400名が参加しました(主催者発表)。そもそも柏の葉キャンパスの駅周辺には東京大学の柏の葉キャンパスや、千葉大学があり理系の街という印象も強く、このようなイベントが行われたようです。
「宇宙アドベンチャーフェスタ」では、いくつものワークショップやイベントが開催されましたが、プラネタリウムクリエーターの大平貴之さんが登場した「宇宙トーク」もその中の一つです。冒頭の言葉は、この大平さんが語った言葉。会場は、体験型農場をテーマに食と農の未来を提案している「オークビレッジ柏の葉」。
無謀だと言われたプラネタリウムの開発
普段は結婚式のレセプションや展示会にも使われるというイベントスペースはカーテンで真っ暗にされ、その中に寝転がって参加できるスペースや椅子が用意されていました。その部屋の中で大平さんが開発した170万もの星空を映し出せるプラネタリウム「MEGASTAR」が投影されます。その満点の星空を眺めながら大平さんの話は始まりました。小さな星たちや遠くの星たちも映し出されているので、奥行きのある空が再現され、プラネタリウムが映す空に吸い込まれそうです。
小学生の時からプラネタリウムの製作を自分で始め、大学時代にはアマチュアでは前例のないレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」の開発に成功した大平さん。
「無謀だと言われていたプラネタリウム作りですが、最初は完成させることができました。また15年以上前に描いていたやりたいことを図にしていましたがそれを見ることで、個人が自宅でプラネタリウムを手軽に楽しめるHOMESTARを作ることができ、やりたいと思っていたことがだんだんと実現していたことがわかります」。
大平さんの夢がどんどんと実現していく様子に聞いている子どもたちの目もキラキラと輝きます。そんな大平さんはまだ実現していない夢があるといいます。
「直径1キロメートルくらいの大きなドーム、それ全体がプラネタリウムになっているようなドームが作れるといいですね。その中は遊園地でもいいし、家や病院、学校もあるような街でもおもしろい。自分一人では実現できない大きなプロジェクトですが、例えば、砂漠や南極などに、もしかすると宇宙にそういうドームが100年後くらいにできるかもしれない」。
夢を叶えていくうちに、どんどんと新しい夢ができるという大平さんの話しにみんなはわくわくとのめり込んでいました。
子どもたちのなぜに答えるワークショップ
大平さんのトークが聞けた「宇宙トーク」のほか、個人でのふうせん宇宙撮影を日本で初めて成功させた岩谷圭介さんと一緒に風船を飛ばすワークショップなども開催されました。
柏の葉公園に集まった子どもたちと一緒にカメラをつけた大きなふうせんを空に飛ばします。宇宙まで飛ばすには1時間くらいかかってしまうので、この日は紐をつけたふうせんを空高く飛ばし、みんなの住む街を映します。撮影した写真はその場でスクリーンに映して上映会。ごうごうという風の音も聞こえ「上空ってこんなに風が吹いているんだ」ということがわかります。
「宇宙を撮影するまでに100回以上失敗しました。みんなからなんでそんなことしてるの、と言われたけれど諦めないでがんばったら成功することができました」とふうせんで撮った宇宙を見せながら、岩谷さんが話します。
このワークショップに連動しているのが「宇宙パラシュート」というワークショップ。宇宙までふうせんを飛ばして撮影をしますが、その後ふうせんは割れてしまいます。真っ逆さまに落ちてくるカメラにはパラシュートが取り付けられており、それを作るというわけ。
毎回50人参加できるこのワークショップは3回開催されましたがどれも満員です。「何回失敗してもいいからやってごらん」と話す岩谷さんは子どもたちに簡単なイラストが書いてある説明書しか渡しません。自身が100回以上失敗したというだけあり、失敗の中から成功までの道を探ってほしいというわけです。色とりどりのポリ袋を切りパラシュートを作ります。「どうやるのー!?」と言っていた子どもたちも少しだけ大人の手助けを借りながらも自分で完成させ、最後に上から落としてゆっくりとパラシュートが開く様子を見て満足そうでした。
作業中にも「なんで大気圏に突入するときにカメラが燃えないの?」「宇宙に栗羊羹を持って行ったらどうなるの?」と質問が飛び出します。そのひとつひとつに「ロケットとかはすごい速さだから燃えちゃうけど、ふうせんやカメラが落ちてくるくらいのスピードだと燃えないんだよ」「宇宙では水分がなくなってしまうから、栗羊羹を持って行ったら硬くなってフリーズドライみたいになっちゃうんだよ」と丁寧に岩谷さんは回答します。
そのほかにも、自分で色とりどりに塗った宇宙の絵を光にかざすことで万華鏡のように楽しむことのできる「宇宙をつくろうワークショップ」やクイズ形式で月の砂について学べるワークショップも一日中大にぎわい。子どもたちが一生懸命取り組んでいる横で、多くの保護者たちが「これは夏休みの自由研究にちょうどいい」と話していたのが印象的でした。
自分の住んでいる場所からずっと遠くにあったと思っていた宇宙が、実はふうせんを飛ばせるくらいの距離だったり、小学生のころ夜空を見上げてプラネタリウムを作りたいと思っていた人が夢を実現させた話しを聞かせてくれたり…子どもたちにとっては宇宙が身近に感じられる時間だったようです。
特に、大平さんと岩谷さんが話してくれた、失敗しても、ひとりでも、諦めずに独学で努力した、という経験。子どもたちも、この話から夢を持つことや、諦めないことの大切さを学べたのではないでしょうか。
大人もわくわくするような「未来こどもがっこう」は年間を通して体験型の学びのカリキュラムを提供してくれます。2015年は毎月の開催が予定されており9月のテーマは「いろんな国の人たちと世界を旅しよう!〜紙ひこうきでコミュニケーション〜」。9月27日に開催されるこのカリキュラムではいろいろな国の紙飛行機を作りながら各国の留学生と交流し、街並みや文化を学んでいくということです。世界を知るだけでなく、コミュニケーションをとる楽しさや重要性、そして手段を実際に体験しながら学ぶことができます。
子どもたちの思考力、判断力、表現力…それらをまとめて「未来力」と呼び、学校では学べない力を育んでくれる「未来こどもがっこう」。これから広がっていきそうな教育だと言えるでしょう。