留学先の韓国のアトリエ風景や、東京のアートシーンを共に切り開いた同時代のアーティストや関係者たちの様々な表情、日常的な都市空間の中にひっそりと存在するものたち。中村の視点はアーティスト/生活者の区別を超え、あらゆる人々のアクションの連鎖によって文化的多様性が増殖していくさまを鋭くとらえます。
それは、世界に対するアーティストの鋭い眼差しそのものであり、街の中に存在する創造性への真摯な感受性を示しています。
近年中村が取り組んできた様々な社会実験、とりわけアーツ千代田 3331の運営やアートプロジェクトの企画などに通底するアートそのものの枠組みをとらえ直そうとする批評精神を見てとることが出来るでしょう。
また、会田誠、池宮中夫、岩井成昭、小沢剛、中ザワヒデキ、八谷和彦、池内務、小山登美夫、西原珉といった同時代のアーティスト・ギャラリスト・編集者らが鮮烈なエネルギーで新しいシーンを切り開いた時代を知る手がかりとしても貴重な展覧会といえます。
会期中、当時を知る作家やキュレーター・批評家を招いたトークイベントを行い、美術史においていまだ充分に語られていない、90年代前半の日本のアートシーンを考察します。さらにこれら写真のほか、2シリーズの新作インスタレーションを発表します。